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一人暮らしの晩酌なら、四合瓶を選んでおけば大体間違いない

背の低い四合瓶と背の高い一升瓶を並べて置き、大きさの違いを見せる和モダンイラスト

一人暮らしの晩酌なら、僕は四合瓶を選びます。一升瓶の存在感や、あの重さを卓に置いたときの満足感は分かった上で、それでも四合瓶です。決め手は、飲み切るまでの日数です。

酒屋の店頭に立つと、同じ銘柄が四合瓶と一升瓶の両方で並んでいることがよくあります。1合あたりに直すと一升瓶のほうが割安な値付けになっていることも多くて、つい手が伸びそうになります。でも一人暮らしという条件を付けた瞬間に、答えは変わってきます。晩酌が習慣になっている人なら、一度の判断ミスが、冷蔵庫を開けるたびに何日も小さく響いてきます。

合数で比べると、差は思ったより大きい

四合瓶は720ml、一升瓶は1.8Lです。単位を「合」に揃えると分かりやすくて、四合瓶はその名のとおり4合、一升瓶は10合にあたります。一升瓶は四合瓶のちょうど2.5本分、という計算です。

四合瓶(4合・720ml)と一升瓶(10合・1.8L)を合の目盛りで並べた図解。一升瓶は四合瓶のちょうど2.5本分にあたることを示している

数字だけ見るとピンと来にくいので、晩酌の回数に置き換えてみます。1回に飲む量を1合とすると、四合瓶は4晩分。一升瓶だと10晩分です。毎晩1合ずつ飲んでも、1本を空けるまでに10日かかります。週に何日か休肝日をはさめば、2週間を超えることも珍しくありません。まとめ買いのつもりで一升瓶を選ぶと、思っていたより長く同じ酒と付き合うことになります。

割安な値付けが効いてくるのは、最後の1杯まで美味しく飲み切れたときの話です。後半を持て余して料理酒に回すことになれば、その差はあっさり消えます。

量の話には、裏返しの見方もあります。一升瓶1本の10合は、四合瓶なら2本と半分。つまり同じ量を飲むあいだに、四合瓶なら違う酒を2本、3本と回せます。純米酒と本醸造を1本ずつ買って、特定名称酒の記事で書いた違いを自分の舌で確かめる、といった遊び方ができるのは小さい瓶ならではです。一人暮らしの晩酌で飽きずに続けるには、この回転の速さが案外効いてきます。

開栓後の変化と、冷蔵庫の話

日本酒は栓を開けたときから、空気に触れて少しずつ酸化が進みます。香りや味わいは、日を追うごとに変わっていきます。吟醸酒の華やかな香りは、開けて数日たつと落ち着いてくると言われます。落ち着いて飲みやすくなる酒もありますが、どう変わるかは飲み手が選べません。飲むペースが同じなら、量が多いほど飲み切るまでの日数は延びます。四合瓶なら数日で決着がつく話が、一升瓶だと開栓直後とはかなり違う顔になってから残りを飲むことになりかねません。

もう一つ、置き場所の問題もあります。国税庁の表示基準では、一度も火入れをしていない生酒には、保存や飲用上の注意事項を表示することになっています。裏ラベルに「要冷蔵」とあれば冷蔵庫行きです。一升瓶は高さがあるぶん、一人暮らし用の小さめの冷蔵庫だとドアポケットにも棚にも収まりにくいことがあります。買ってから置き場所に困る酒は、結局手が伸びる回数も減ってしまいます。

一升瓶に切り替えていい条件

とはいえ、一升瓶を選んだほうがいい場面もちゃんとあります。

条件は一つです。すでに気に入っている酒があって、しばらく同じ酒を飲み続ける自信があるとき。酒屋の選び方の記事で、初めて買う銘柄は四合瓶で試すのがおすすめと書きました。そこから一歩進んで、日ごとの味の変わり方まで分かっている酒であれば話は別です。開けて数日後の落ち着いた味も含めて好きだと言える酒なら、10日かけて付き合う価値があります。定番として置いておける1本が決まったら、そこで初めて一升瓶の出番です。

一升瓶を買ったら、空き瓶の行き先まで

一升瓶には、四合瓶にはない役目もあります。多くの一升瓶は各社共通の規格で作られたリターナブル瓶で、酒屋や集団回収を通じて集まったびんは、びん商が引き取って洗浄し、あらためて中身を詰めて出荷される仕組みが今も回っています。使い捨てではなく、繰り返し使われることを前提にした容器です。

一方で、びん再使用ネットワークのコラムによれば、業務用の卸や小売店経由の回収は今も続いているものの、一般家庭で消費された一升瓶は回収ルートに乗らず、資源ごみとして処分されてしまうケースが増えているそうです。空いた一升瓶は、住んでいる自治体の資源回収で一升瓶を分けて集めていないか確かめるのが、まず手軽な一歩です。買った酒屋が引き取りをしているか聞いてみるのも手ですが、扱っていない店もあるので、断られても当然くらいの気持ちで。

定番の1本が決まるまでは、四合瓶を1本ずつ空けていく。一人の晩酌は、そのくらいの身軽さがちょうどいいと僕は思っています。


この記事を書いた人

藤本裕介

広島在住。映像の仕事のかたわら日本酒にどハマりし、いつか自分の酒を仕込みたくて、蔵を訪ね歩いています。飲み手として、半歩先の楽しみ方を書いています。

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