純米・吟醸・本醸造の違い、実はたった2つの軸で決まります
日本酒のラベルには、「純米大吟醸」「特別本醸造」「吟醸」と、似たような漢字がずらっと並んでいます。どれも高そうに見えて、なんとなく格付けの序列のように感じますよね。
実はこの表示、たった2つの軸の組み合わせでできています。暗記は要りません。仕組みさえ分かれば、次に酒屋で迷う時間が減ります。
「特定名称酒」というルールがある
「純米」「吟醸」「本醸造」といった名前は、蔵が好きに名乗っていいわけではありません。国税庁が定めた「清酒の製法品質表示基準」という基準があって、原料や造り方が一定の条件を満たした酒だけが、この名前を名乗れます。この条件を満たした清酒をまとめて「特定名称酒」と呼びます。
条件を満たすものは全部で8種類。純米大吟醸、純米吟醸、特別純米、純米、大吟醸、吟醸、特別本醸造、本醸造です。数だけ見ると多く感じますが、分け方はシンプルです。「醸造アルコールを使うかどうか」と「米をどれだけ磨いたか」、この2つの軸で並べ替えると、8つがきれいに整列します。
条件を満たさない清酒は「普通酒」と呼ばれます。普通酒が劣っているという意味ではなく、単に表示基準の条件を満たしていない(あるいは満たす必要のない造り方をしている)というだけの話です。
軸その1、純米かそうでないか
最初の分かれ道は、醸造アルコールを使っているかどうかです。
米・米麹・水だけで造った酒だけが、「純米」を名乗れます。純米大吟醸、純米吟醸、特別純米、純米。名前に「純米」の字が入っている4つがこちら側です。
残りの4つ、大吟醸、吟醸、特別本醸造、本醸造は、醸造アルコールを加えています。とはいえ、水で薄めて量を増やすための添加ではありません。少量加えることで香りが立ちやすくなり、味の輪郭がすっきりすることを狙った造り方で、使っていい量もあらかじめ決められています。「アル添(アルコール添加)は手抜き」というイメージを持たれがちですが、それは少し乱暴な見方です。このあたりは長くなるので、別の記事に書きました。
どちら側の酒であっても、麹米(米麹に使う米)の使用割合が15%以上であることなど、共通の条件も設けられています。純米だから麹の量が特別多い、というわけではありません。
軸その2、精米歩合という数字
もうひとつの軸が、精米歩合です。玄米の表面を削って、残った部分の割合を示す数字で、数字が小さいほどたくさん磨いたことになります。60%なら、玄米の表面4割を削り落として、残った6割を使っている計算です。
この精米歩合に、特定名称酒それぞれの基準が決まっています。
本醸造は70%以下。大吟醸・純米大吟醸は50%以下。吟醸・純米吟醸は60%以下。「特別」の付く特別本醸造・特別純米は60%以下、または特別な製造方法であること(この場合はラベルにその内容を説明する表示が必要です)。そして純米だけは、2004年の基準改正以降、精米歩合の規定がありません。米・米麹・水だけで造れば、それだけで純米を名乗れます。
2つの軸を掛け合わせると、こういう並びになります。
数字が小さい大吟醸や純米大吟醸ほど「上位互換」に見えますが、そう言い切れないのが日本酒の面白いところです。精米歩合は磨いた手間の証明であって、好みに合うかどうかの保証書ではありません。日本酒度の数字だけで味の甘辛が決まらない話は前に辛口の記事で書きましたが、精米歩合も似ています。数字は目安で、答えは自分の舌で出すものです。
結局、どれを選べばいいのか
ここまでの話を、売り場での選び方に落とし込みます。
まず決めるのは、米の旨みをしっかり感じたいか、香りの華やかさや軽快さを取りたいか。前者なら純米系、後者ならアル添系に手を伸ばすと、狙った方向に近づきやすいです。次に精米歩合は「贅沢度」の目盛りとして見ておく。60%以下なら吟醸系のフルーティーさ、50%以下ならさらに研ぎ澄まされた香りが出やすい、というくらいの理解で十分です。
初めての1本で迷ったら、純米吟醸が無難です。米の旨みも、吟醸らしい香りの高さも、両方ちょっとずつ味わえる位置にいるからです。両方の入り口を一度に覗ける、お得な1本です。
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ラベルの漢字の並びは、暗記する対象ではありません。2つの軸の答え合わせをするだけです。次に売り場で「純米吟醸」や「特別本醸造」の文字を見たら、米だけで造られているか、精米歩合はどのあたりか、頭の中で位置を確認してみてください。それだけで、隣の瓶との違いが急に見えてきます。
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