ラベル、全部読まなくていい。酒屋で見る場所は3つです
酒屋の棚の前で、気づけば10分近く突っ立っていたことがあります。似たような瓶がずらりと並んでいて、どれが自分向きなのか手がかりがない。結局、いちばんラベルのデザインが気に入った1本を、なんとなく選んで帰りました。
いわゆるラベル買いです。悪くはありません。ただ、これだと当たる確率も外れる確率も五分五分のままです。
実は裏ラベルには、選ぶための手がかりがちゃんと書いてあります。見る場所さえ知っていれば、棚の前で固まる時間はぐっと減ります。今日は、その見る場所を3つと、迷ったときに店員さんへ聞くひと言まで、そこだけに絞って書きます。
見る場所1、「製造年月」は書いてあれば得な情報
裏ラベルの「製造年月」、実は最近ルールが変わった項目です。以前は清酒の必要記載事項、つまり必ず書かなければならない情報でした。それが2023年1月の表示基準改正で、任意記載事項に変わりました。書いても書かなくても違反にはならない扱いです。
とはいえ、書いてある酒に出会ったら、見ておいて損はありません。その酒が瓶詰め、あるいは出荷用に仕上げられた時期を示す、数少ない客観情報だからです。
ここで気をつけたいのは、新しいほど良いという単純な話ではないことです。ひやおろしの記事で書いたように、あえてひと夏寝かせてから出荷する酒もあります。製造年月が新しいから偉い、古いから外れ、という採点はできません。
判断の軸になるのは、加熱処理をしているかどうかです。一般的な火入れ酒(出荷までに加熱処理を2回している酒)なら、製造年月は瓶詰めされてから店頭までにどれくらい経ったかの、ざっくりしたものさしとして使えます。生酒のように一度も加熱処理をしていない酒は劣化が早いので、より新しい製造年月を選んだほうが安心です。製成後いっさい火入れをしていない「生酒」には、保存や飲用上の注意事項を表示するルールがあります。裏ラベルに「要冷蔵」の字を見つけたら、帰り道に寄り道せず冷蔵庫へ、の合図です。
見る場所2、特定名称と原材料欄で「方向」を決める
次に見るのは、原材料名の欄です。ここに書いてある内容で、酒の方向性がかなり絞り込めます。
米・米こうじ・水だけで造られていれば、純米酒や純米吟醸といった「純米系」。原材料に醸造アルコールが加わっていれば、本醸造や吟醸といった「アル添系」です。特定名称酒の記事で書いたとおり、この違いは8種類ある特定名称酒を分ける2つの軸のひとつです。
米の旨みやコクをしっかり味わいたいなら純米系、香りの華やかさや飲み口の軽さを取りたいならアル添系に手を伸ばすと、狙った方向に近づきやすくなります。アル添は手抜きだというイメージを持たれがちですが、加える量に上限が決まっている技術的な選択で、アル添の記事に書いたとおり香りを引き出すための手法です。原材料欄の文字を、迷ったときの分かれ道として使ってください。
見る場所3、蔵元のひとことは日本酒度より正直
3つめは、蔵が書いている味わいの説明です。「香り穏やかです」「食中酒にどうぞ」といった、数行のコメントが裏ラベルの隅に書いてあることがよくあります。
これは、日本酒度の数字よりよほど頼りになります。日本酒度がプラスでも香りが華やかだと甘く感じたり、マイナス寄りでも酸がしっかりあるとキレて感じたりすることがある話は辛口の記事で書きました。数字1つで味は決まりません。蔵の人が実際に飲んで書いた一言のほうが、よほど実感に近い情報です。
もうひとつ、ラベル以外にも手がかりがあります。その酒が冷蔵ケースに入っているかどうかです。冷蔵ケースに入っている酒は、火入れの回数が少ないか、蔵が低温での管理を前提にしている酒です。常温の棚に並んでいるものは、比較的日持ちのする造り。どちらの棚から取ったかで、家に帰ってからの置き場所が決まります。
店員に聞く、外れないひと言
3か所を見てもまだ迷うときは、店員さんに聞くのがいちばん早い方法です。ただし、聞き方には差が出ます。
「おすすめは何ですか」だけだと、店員さんはこちらの好みを知らないまま答えるしかありません。返ってくるのはその店の自信作で、それは間違いなくいい酒です。ただ、自分がいま飲みたい方向と重なるかは別の話。先に手がかりを渡してしまったほうが早いんです。外れにくい聞き方は、予算・シーン・方向性の3つを伝えることです。
- 「予算2000円くらいで、食事に合わせやすい、香り控えめのものはありますか」
- 「1500円くらいで、香りが華やかな、贈り物に使える1本はありますか」
居酒屋の注文と違って、酒屋は在庫を全部把握している人が目の前にいます。予算とシーンさえ渡せば、あとは向こうの土俵です。
初めて買う銘柄は、四合瓶(720ml)で試すのがおすすめです。一升瓶(1.8L)は四合瓶ちょうど2.5本分あり、好みに合わなかったときに飲み切るのが大変になります。気に入ってから一升瓶に切り替えれば十分です。
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棚の前で固まっていた頃の自分に1行だけ渡せるなら、こう書きます。ラベルは全部読まなくていい。見るのは製造年月、特定名称と原材料欄、蔵元のひとこと、この3か所だけ。それでも迷ったら、あとは店員さんに予算とシーンを伝えればいい。
次に酒屋の棚の前に立ったら、10分固まる前に、まず裏返してみてください。
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