コンビニの日本酒棚は、銘柄を試す棚だと僕は思っています
コンビニの日本酒棚は、「銘柄を試すための棚」として使うのがいちばん得だと僕は考えています。
酒屋が閉まった時間に、仕方なくコンビニで日本酒を買う。そんなときの棚は「妥協の棚」に見えがちです。カップ酒と紙パックしかない、と思い込んでいた時期が僕にもありました。でも、落ち着いて棚を見ると、180mlや300mlの小さな容器が並んでいて、四合瓶1本ぶんの予算で何本か選べる。酒屋ではやりにくい買い方が、ここではできます。
棚に並ぶのは、カップ・小瓶・紙パックの3つの形
棚に並ぶ形は、大きく分けてカップ酒、紙パック、そして300mlなどの小瓶の3つです。このうち小瓶、いわゆるミニボトルについては、沢の鶴の解説が、コンビニはミニボトルが多いので好みの味を探しやすく、さまざまな日本酒を気軽に試せる、と書いています。店によって置いていない商品もある、という注意も添えてあります。
四合瓶の記事で、一人暮らしの晩酌は四合瓶で大体間違いない、と書きました。その前の段階、つまり「どの銘柄を四合瓶で買うか」を決める場所として、コンビニの小瓶はちょうどいい。180mlなら1合、300mlなら1合半と少し。飲み残しを気にせずに、味の輪郭だけ確かめて終われます。
ワンカップの180mlは、発売のときから「1回分」だった
カップ酒の代表格、ワンカップ大関には、はっきりした生まれがあります。大関の公式サイトの年表によると、1963年に当時の社長がコップ入りの清酒を商品化するよう指示し、デザイン会議で企画が固まり、名前は「ワンカップ大関」に決まりました。発売は1964年。会社概要には、東京オリンピックの開幕日に合わせて10月10日に発売した、とあります。容量の180mlは、公式サイトの「こだわり」のページで、開発のポイントのひとつとして「1回の飲酒として適当な容量」と定めたもの。1合という単位を、発売のときからそのまま容器にしていたわけです。
その後の広がりも年表に載っていて、1967年には酒類業界で初めてカップ酒の自動販売機を置き始め、1973年に300mlの缶、1989年に100mlの小さなサイズが出て、2024年で発売から60年です。大関の年表を見ると、容器の量の幅は60年かけて広がってきたものだと分かります。
中身はどうか。現行の「上撰 金冠 ワンカップ」の商品ページには、分類が普通酒、アルコール分15%、日本酒度±0、酸度1.4、原材料は米と米こうじと醸造アルコール、参考小売価格は180mlで265円(税別)、とあります。「上撰」という字は国の等級に見えますが、日本酒造組合中央会の用語集によると、特級・一級・二級の級別制度は平成元年4月以降廃止されています。大関の年表にも、級別の廃止後に特撰・上撰・佳撰へ呼び名を変えた、とあるので、いまの上撰や佳撰は蔵ごとの呼び名です。ラベルの読み方としては、特定名称の字があるかどうかのほうが手がかりになります。
特定名称の字が無い酒を怖がらない
小さな容器でも、ラベルに書いてあることは四合瓶と変わりません。特定名称酒の記事で書いたとおり、純米や吟醸といった特定名称は、国税庁の表示基準で要件が決まっている言葉です。要件を満たさない酒はこの名前を名乗れず、表示基準は特定名称酒以外の清酒に特定名称と紛らわしい用語を使うことも原則として禁じています。だから「純米」と書いてあれば米と米こうじだけの酒。特定名称の字が無ければ、一般に普通酒と呼ばれる酒です。
普通酒は、特定名称の要件に当てはまらない酒の総称です。上で見たワンカップは、米と米こうじに醸造アルコールを加えたタイプでした。特定名称の字が無いことに身構える人もいますが、棚の前で見るべきは字の有無であって、字の優劣ではありません。純米の字がある小瓶と、字の無いカップを1本ずつ買って比べる。コンビニの棚は、それができる量で並んでいます。
店によっては、常温の棚に生酒の小瓶がある
店によっては、冷蔵ケースに入っていない生酒の小瓶が並んでいることがあります。生酒は火入れをしない酒なので、本来は冷蔵が基本。常温の棚に置ける生酒には、それを可能にした技術があります。たとえば月桂冠は、同社の解説によると、1984年に超精密ろ過の技術で日本酒として初めて常温流通できる生酒を発売しました。精密ろ過で酵母や火落菌を取り除き、さらに限外ろ過で酒の中の酵素を90パーセント程度まで取り除くことで、酒質の変化を少なくしている、とあります。詰めるのも無菌室です。
それでも同じ解説は、常温流通できる生酒も冷暗所で保存するなど丁寧に扱う必要がある、と念を押しています。買って帰ったら冷蔵庫、開けたら早めに。生酒の記事で書いた扱いは、コンビニで買った小瓶でも同じです。
最後に、つまみの話を少し。つまみも同じ棚で揃います。沢の鶴の解説では、おでんには燗にした純米酒や本醸造酒、焼き鳥の塩には吟醸酒や本醸造酒、タレには純米酒、煮卵には米の旨みを感じる純米酒が挙がっています。コンビニのおでんと純米の小瓶1本で、晩酌はひと晩ぶん成立します。
僕が勧めたい買い方は、こうです。知らない銘柄の小瓶を1本と、知っているカップを1本。同じ晩に両方は開けず、今夜と明日の晩に分けて飲んで、気に入ったほうを週末に酒屋で四合瓶にする。コンビニの日本酒棚は、その入口として、かなり優秀です。
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